PPSメールマガジンvol.63「日銀が続けるYCC政策とは」 2023.02.24 #メールマガジン

こんにちは。
PPSの吉岩です。

日銀は昨年12月、
長期金利の許容変動幅を
0.25%から0.5%まで引き上げました。

この発表から数ヶ月が経ちましたが、
さらなる引き上げや金融緩和自体の修正などが
メディアで話題になる時も多くなっています。

そもそも、
この長期金利に上限が設けられているのは、
日銀が金融緩和政策のひとつとして進めている
イールドカーブ・コントロール(YCC)政策によるものです。

そして、この政策は次期総裁に代わる際に、
修正や撤廃が行われるのではないかと、
金融市場やアナリストの間で今、注目されています。

このイールドカーブ・コントロールについて、
どんな目的があるのか、どんな効果があるのか、
言葉だけではイメージが浮かびにくい政策です。

今回は出来るだけわかりやすく解説したいと思います。

 

 

まず「イールドカーブ・コントロール」とは、
物価の安定化や金融緩和の強化を目的として、
2016年から導入されました。
(以下、イールドカーブ・コントロール=YCCと略します。)

どんな内容かと言うと、
中央銀行である日銀が、
経済の景況や市場動向に応じて、
全体の金利を調整するための政策です。

ここでの金利というのは、
国債の短期から長期の金利であり、
この金利がローンや預金の利息に影響を与えます。

基本的に国債の金利も、
定期預金と同じく年数が長いほど金利が高くなるため、
期間と金利でグラフにすると右上がりの曲線となります。

この曲線は「イールドカーブ」と言われ、
イールドは利回りや金利を表す言葉となります。

このイールドカーブを操作するため、
日銀は短期金利と長期金利の2点に誘導目標を定めました。

短期金利は金融機関が預ける
日銀の口座にマイナス金利を導入。

長期金利は10年物国債の金利を概ねゼロ%として、
上下幅0.5%になる様に操作しているのです。

この長期金利の調整については、
日銀が債券市場から直接国債を買い入れることで、
金利を下げる調整を行っています。

国債は売られれば、
価格が下がり金利が上がる。

買われれば価格が上がり、
金利が下がる関係性があります。

そのために日銀は、
金融緩和とYCC政策のもと、
市中の国債を買い入れているのです。

なぜ、金利を低く操作しているかと言えば、
国債の金利は日本国内の金利の水準となるため、
低金利を維持することで、
企業や国民はお金を借りやすくなります。

お金を借りやすい状況は、
事業の投資や個人消費に回しやすくなるため、
景気にも良い影響を与えると言われるからです。

逆に金利が高くなると、
借りづらい状況になるため、
経済で動くお金も減り、
景気が悪化するという問題もあります。

そのため現在の日本では、
超低金利の金融緩和政策が続けられており、
YCC政策による短期・長期金利の調整が行われています。

 

 

レストラン経営で例えるなら…。

店の経営が悪くお客さんが少ない場合、
料理の価格を下げるなどして、
呼び込みをしなければなりません。

逆に経営が良いが、
お客さんの数を減らしたいとなれば、
料理の価格を上げることで、
客数を減らすことができます。

金利もこの料理の価格と同じく、
お金を使ってもらうために金利(価格)を下げる
使って欲しく無い場合は上げることで調整されます。

YCC政策は景気に応じて、
適切な金利に操作するための政策なのです。

 

 

そして今、YCCが問題となっているのは、
これまで長い期間運用を行なった結果、
様々な副作用が表に出てきているからです。

まずひとつが、為替レートの増減です。

本来は上がるはずだった金利を
日銀が抑え込んだことで金利差が生まれ、
円安変動を助長させる結果となりました。

次に債券市場の機能低下です。

国債の需要供給に合わせた金利と価格の変動は、
日銀の大量買い入れやYCC政策での金利固定化で
本来の動きを無視した形になっています。

そのため、
債券市場の参加者も減少していると言われ、
正常な市場として機能が低下している点が問題視されています。

さらに、これまでの買い入れから、
日銀が保有する国債の全体比率は、
昨年末の時点で半分以上に到達したと報じられています。

ある意味では、国の借金を日銀が半分抱えている状態です。

また、昨年から今年にかけ、
海外ファンドや投資家が国債の大量売りを何度も行い、
日銀が買い入れで対抗する攻防が起こりました。

海外勢から見れば今の金融緩和は無理があり、
どこかで限界が来て利上げに移ると見込まれたからです。

その買い入れ額は、
1月では23兆円規模と膨大な額となっています。

現在は落ち着きを見せておりますが、
今後もまた同じ様な戦いが起きるかもしれません。

さらに、これだけ国債を抱え込んでいるならば、
金利を上げた際の利息も馬鹿にならないため、
利上げに踏み込めなくなったとも言われています。

 

 

以上が今回の説明となります。

このYCC政策は、
出口戦略が非常に難しいと言われており、
過去に導入したオーストラリアでは、
YCC撤廃時に市場は混乱を起こす結果となりました。

アメリカも近年で導入が検討されましたが、
出口戦略の難しさから見送ったと言われております。

日本も今後、金融緩和から転換した際に、
YCC撤廃の影響を受けるかもしれません。

YCC政策が決して悪というわけではなく、
不況であった日本をなんとか支えた政策でもありました。

しかし、時代も状況も変わり、
綻びが見え出している政策でもあります。

長年押さえ込んだツケを
どこかで払わなければならないのが、
今の日本の状況です。

4月から新総裁となる植田氏においても、
このYCC政策をどのように調整するのか
現在の金融緩和の出口戦略を求められている様に感じます

PPS.Llc代表 吉岩勇紀

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この記事は2023年2月13日配信のメールマガジンとなります。
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