PPSメールマガジンvol.57「過去最大の貿易赤字とその本質」 2023.02.03 #メールマガジン

こんにちは。
PPSの吉岩です。

先日、日本の2022年貿易収支が
19.9兆円の赤字であると発表されました。

これは2014年の12兆円を超える過去最大の赤字幅です。

この巨額な赤字には、
日本の先行きへの不安を感じさせますが、
私個人の観点としては、大きく悲観すべき問題ではなく、
また別の視野を持って見るべきだと思っています。

その理由についてですが、
まずは貿易赤字の理由について説明すると、
「円安」と「資源高」が主な要因となります。

日本は食品やエネルギー資源を輸入頼りにしている国であり、
資源高騰や円安による輸入価格の値上げは、
貿易の収支にも大きく関わっています。

これらは電力や食材など生活に直接結びつく資源のため、
高騰したから買わないという選択を取ることはできません。

そのため、資源高が輸入の赤字を膨らませています。

また円安に関しては、
円安になれば輸出が伸びるとは言います。

実際に輸出額も増加しており、
トヨタの輸出も前年を超える実績など、
自動車企業も好調です。

ですが、輸出額よりも輸入額はそれ以上に増えているため、
両者の差し引きで黒字とまではいきませんでした。

やはり資源高の輸入影響が強い点がありますが、
この数十年で国内製造の生産拠点が海外に移ったことにより、
円安での輸出恩恵も薄まった印象があります。

さらに言えば電気製品も、
かつての「日本ブランド」という側面が下がり、
世界との競争力を落としている印象です。

今や世界各国が、
安くてクオリティの高い製品を作り、
世界中に輸出を行っています。

電気店で取り扱わない様な格安な海外製品も、
Amazonなどで簡単に購入して試すことが可能です。

中国や東南アジア製の電気製品が家に無いという方も、
ほとんどいないのではないでしょうか。

携帯電話に関しても、
日本製のスマホはiPhoneなど海外メーカーの勢いに押され気味です。

かつて貿易大国の日本が得意であった
「安く輸入し高く輸出する」貿易黒字のスタイルが、
競争力低下と共に崩れたという感じでしょう。

 

 

以上が、貿易赤字の背景ですが、
最初の結論でも言った通り、過去最大の赤字だからと言って
この数年で日本が終わると言うまでの問題ではありません。

なぜなら、海外からの収入は貿易だけでなく、
投資収益や旅行収益もあり、それらを含めれば黒字であるからです。

海外会社からの利子と配当は依然として黒字であり、
旅行収益も昨年末から赤字が減少してきております。

貿易収支や旅行などのサービス収支、
投資収益を合わせた「経常収支」で見れば、
海外からの収益はまだ黒字なのです。

これは、貿易大国だった時代の日本に比べ、
海外から稼ぐ構造が変わったとも言えます。

ですので、あまり悲観的に見るべき数字ではありませんが、
それでも、約20兆円赤字という数字を強調して、
経済の先行きを不安視する意見もあります。

それも正しい意見ですが、
本当に不安視しなければならない部分は赤字額ではなく、
今後の日本経済の成長という点です。

日本の国内生産力や輸出競争力の低下、
それによる経済成長の停滞は、
日本における今後の課題でもあります。

先行きを不安視する以上、
こういうニュースを見てより不安を覚えますが、
この数字がどんな意味を持つのか正しく理解し、
余計な不安を抱えないことも、
また大切なのではないかと思います。

それではまた!

PPS.Llc代表 吉岩勇紀

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この記事は2023年1月27日配信のメールマガジンとなります。
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