すでにメディアで報道された通り、
米銀行であるSVB(シリコンバレー銀行)が
2023年3月10日に経営破綻しました。
リーマンショック以来、最大規模の破綻と言われ、
12日には米シグネチャー・バンクも経営破綻が発表されるなど、
他の金融機関にもその影響を及ぼしています。
このSVBは、アメリカでも中堅の銀行で、
日本では地銀クラスの規模ですが、
総資産は約28兆円で全米16位の銀行でした。
そのような銀行が、
わずか数日で経営破綻を起こす結果になったのは、
現在の米経済の影響が強いと言えるでしょう。
そのひとつが利上げです。
SVBは個人の預金ではなく、
ITなどスタートアップ企業への融資に重点を置いた銀行です。
アメリカが金融緩和の時には、
多くのベンチャー企業から預金を集め、
資産規模を大きく伸ばしたと言われています。
その預金を米国債や証券で運用し、
銀行の運営を行なっていました。
しかし、コロナ経済後の米国は、
金融引き締めによる利上げを始めました。
利上げが進むほど金利も上がるため、
企業側は融資を受けにくく、
返済額も金利上昇に連れて増えて行きます。
IT関連企業も業績の不振が目立ち始め、
預金を引き出す動きが多くなりました。
そして、米国債の利回りは上昇しましたが、
債券自体の価格は下落しています。
SVBの保有した債権にも損失が生まれます。
1、取引先の資金繰り悪化で預金引き出し増加
2、米国債下落による損失
上記の様な影響から、
SVBが将来的に資本不足となるリスクが生じました。
この状況を打破するため、
財務体制の見直しや債券の売却を行う
資金増強計画を発表しましたが、
市場や投資家の不安を増幅させる結果となりました。
本来であれば、一時的な株価の下落や、
預金引き出しの加速までは予想できますが、
破綻に至るまでには至らないはずです。
しかし、
同日にシルバーゲート銀行が事業を清算し、
閉鎖を発表していました。
これが、SVBの不安を益々増幅させる背景でもあったのです。
シルバーゲート銀行が事業を閉鎖する理由は、
SVBと同じような理由です。
暗号通貨サービスの提供を主軸にした銀行で、
昨年のFTX取引所の破綻騒動の余波から、
預金引き出しによる資金流出が増加していました。
両行とも経営の問題が顧客からの預金流出であり、
「シルバーゲート銀行が閉鎖するならSVBも危ういのでは?」
という信用不安も強まりました。
その不安は急速に高まったことで、
SVBの株価は60%下落を起こし、
取り付け騒ぎから預金引き出しが急激に加速し、
わずか数日で経営破綻に至る結果となったのです。
金融市場にも、
銀行など金融株が下落し、
為替もドル円が円高に動きました。
今後も影響が表れていくと思われますが、
米財務省が本日の朝の時点で発表したところによれば、
SVBの全預金者が完全に保護を行うとのことです。
この措置は、個別の銀行の救済ではなく、
預金者だけを保護する方針です。
その目的は、疑心暗鬼によって、
関連の無い他銀行の預金流出や、
連鎖的な経営破綻の防止にあります。
また、SVBと取引をしたIT企業が、
預金を失うことで倒産するリスクもあるため、
事前に抑えるためとも言えます。
この発表から、
金融市場の不安感は若干落ち着いたと言えます。
ですが、しばらくは続報次第ではまた影響もあるため、
注視しておくべき情勢と言えるでしょう。
さて、今回の経営破綻は、
銀行自体の財務形態や流動性という問題もありますが、
「利上げ」と「預金流出」が招いた結果でもあります。
日本に住んでいれば、
銀行は安全なものと考える人も多いですが、
100%安全ではないということを、
今回の件で学ばなければならない部分だと思います。
アメリカの銀行でも、
資産額が上位の銀行でも、
中堅でも地方銀行でも、
歯車がおかしくなれば破綻となります。
銀行を利用する以上、
我々が知っておかなければならないのは、
銀行は預金者のお金を
すべて現金で持っているわけではないということです。
どんな銀行でも、
その時保有する現金がすべて引き出されてしまえば、
経営は破綻します。
銀行や金融機関はそのリスクを
「信用」という形で補っています。
信用が失われた時、
顧客から取り付け騒動が起こり、
資本不足や不履行による経営破綻ともなり得るのです。
今の日本の金融緩和の状況では、
銀行が破綻するという可能性はほとんどありませんが…。
緩和政策の変更や利上げが
今後行われた場合には状況も変わります
その状況次第で、
何が一番リスクが少ないかを考え、
「○○は絶対安全」という固定観念を捨てた方が、
資産形成でも役に立つ場面が表れるかもしれません。
PPS.Llc代表 吉岩勇紀
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