PPSメールマガジンvol.69「米銀行破綻からみた金融機関の弱点」 2023.03.20 #メールマガジン

すでにメディアで報道された通り、
米銀行であるSVB(シリコンバレー銀行)が
2023年3月10日に経営破綻しました。

リーマンショック以来、最大規模の破綻と言われ、
12日には米シグネチャー・バンクも経営破綻が発表されるなど、
他の金融機関にもその影響を及ぼしています。

このSVBは、アメリカでも中堅の銀行で、
日本では地銀クラスの規模ですが、
総資産は約28兆円で全米16位の銀行でした。

そのような銀行が、
わずか数日で経営破綻を起こす結果になったのは、
現在の米経済の影響が強いと言えるでしょう。

そのひとつが利上げです。

SVBは個人の預金ではなく、
ITなどスタートアップ企業への融資に重点を置いた銀行です。

アメリカが金融緩和の時には、
多くのベンチャー企業から預金を集め、
資産規模を大きく伸ばしたと言われています。

その預金を米国債や証券で運用し、
銀行の運営を行なっていました。

しかし、コロナ経済後の米国は、
金融引き締めによる利上げを始めました。

利上げが進むほど金利も上がるため、
企業側は融資を受けにくく、
返済額も金利上昇に連れて増えて行きます。

IT関連企業も業績の不振が目立ち始め、
預金を引き出す動きが多くなりました。

そして、米国債の利回りは上昇しましたが、
債券自体の価格は下落しています。

SVBの保有した債権にも損失が生まれます。

1、取引先の資金繰り悪化で預金引き出し増加
2、米国債下落による損失

上記の様な影響から、
SVBが将来的に資本不足となるリスクが生じました。

この状況を打破するため、
財務体制の見直しや債券の売却を行う
資金増強計画を発表しましたが、
市場や投資家の不安を増幅させる結果となりました。

本来であれば、一時的な株価の下落や、
預金引き出しの加速までは予想できますが、
破綻に至るまでには至らないはずです。

しかし、
同日にシルバーゲート銀行が事業を清算し、
閉鎖を発表していました。

これが、SVBの不安を益々増幅させる背景でもあったのです。

シルバーゲート銀行が事業を閉鎖する理由は、
SVBと同じような理由です。

暗号通貨サービスの提供を主軸にした銀行で、
昨年のFTX取引所の破綻騒動の余波から、
預金引き出しによる資金流出が増加していました。

両行とも経営の問題が顧客からの預金流出であり、
「シルバーゲート銀行が閉鎖するならSVBも危ういのでは?」
という信用不安も強まりました。

その不安は急速に高まったことで、
SVBの株価は60%下落を起こし、
取り付け騒ぎから預金引き出しが急激に加速し、
わずか数日で経営破綻に至る結果となったのです。

金融市場にも、
銀行など金融株が下落し、
為替もドル円が円高に動きました。

今後も影響が表れていくと思われますが、
米財務省が本日の朝の時点で発表したところによれば、
SVBの全預金者が完全に保護を行うとのことです。

この措置は、個別の銀行の救済ではなく、
預金者だけを保護する方針です。

その目的は、疑心暗鬼によって、
関連の無い他銀行の預金流出や、
連鎖的な経営破綻の防止にあります。

また、SVBと取引をしたIT企業が、
預金を失うことで倒産するリスクもあるため、
事前に抑えるためとも言えます。

この発表から、
金融市場の不安感は若干落ち着いたと言えます。

ですが、しばらくは続報次第ではまた影響もあるため、
注視しておくべき情勢と言えるでしょう。

 

 

さて、今回の経営破綻は、
銀行自体の財務形態や流動性という問題もありますが、
「利上げ」と「預金流出」が招いた結果でもあります。

日本に住んでいれば、
銀行は安全なものと考える人も多いですが、
100%安全ではないということを、
今回の件で学ばなければならない部分だと思います。

アメリカの銀行でも、
資産額が上位の銀行でも、
中堅でも地方銀行でも、
歯車がおかしくなれば破綻となります。

銀行を利用する以上、
我々が知っておかなければならないのは、
銀行は預金者のお金を
すべて現金で持っているわけではないということです。

どんな銀行でも、
その時保有する現金がすべて引き出されてしまえば、
経営は破綻します。

銀行や金融機関はそのリスクを
「信用」という形で補っています。

信用が失われた時、
顧客から取り付け騒動が起こり、
資本不足や不履行による経営破綻ともなり得るのです。

今の日本の金融緩和の状況では、
銀行が破綻するという可能性はほとんどありませんが…。

緩和政策の変更や利上げが
今後行われた場合には状況も変わります

その状況次第で、
何が一番リスクが少ないかを考え、
「○○は絶対安全」という固定観念を捨てた方が、
資産形成でも役に立つ場面が表れるかもしれません。

PPS.Llc代表 吉岩勇紀

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