PPSメールマガジンvol.55「円高の要因、日銀VS市場の攻防」 2023.01.23 #メールマガジン

こんにちは。
PPSの吉岩です。

さて、ドル円は週明け127円台でのスタートとなりました。

先週発表された米CPI(消費者物価指数)は予測通りの数値となり、
米経済のインフレが鈍化していることが市場に伝わりました。

その影響からドル円は132円台から128円まで進み、
アメリカの利上げペースが下がる見込みも強くなっています。

しかし、今回の円高要因は米経済だけではなく、
昨年末の日銀による金利修正が今の円高を招いているのです。

今回はその状況について、解説をいたします。

 

 

まずはおさらいですが、
日銀は昨年12月に長期金利の許容変動を
±0.25%を±0.5%まで拡大する金融緩和の見直しを発表しました。

これまで10年国債の金利を
±0.25%の幅でコントロールしていたものを
±0.5%に変更したという内容となります。

国債は買う人が多くなれば価格が上がり、
金利が下がるという動きを持つため、
日銀はこの金利を0.5%以下に抑えるように、
市場から国債を購入し金利を調整しているのです。

そして当初設定した±0.25%の幅では、
上限を超えようとする場面が多くなったため、
先月より±0.5%に修正を行いました。

しかし、この±0.5%に変更後、
ここ数日での投資家からの売りが強くなっており、
日銀の国債購入額も増加しています。

すでにニュースでも報道されていますが、
日銀は12日に4.6兆、13日には5兆円の国債を買い、
2日で10兆円規模となる過去最高の購入ペースとなりました。

10年国債の金利が一時0.545%を記録し、
上限0.5%を突破する動きがあったためです。

日銀は市場の10年国債を買い込み、
長期金利を無理矢理押し込めようとしていますが、
日銀と戦うかの様に、国債の売りを行う投資家が増えています。

これまでも海外ファンドとの
国債売買の攻防は何度か行われましたが、
今度は市場全体で日銀と戦っている状況に近づいています。

なぜこのような戦いが始まったかと言えば、
更なる政策修正の期待を金融市場で意識されているためです。

投資家は修正が起きるという思惑で売り続け、
日銀がその分を必死に買い続ける状況が起こっています。

この状況が思わしくない場合、
早ければ1月17日〜18日での日銀金融政策決定会合にて、
追加の修正が起きる可能性も出てきました。

しかし、修正はあくまでもこれは市場の思惑です。

見直し後からの期間はまだ短いため、
様子見の現状維持で終わる可能性も大きいです。

ですが、
この状況が続けば市場の思惑が覆らない限り、
日銀は国債の大量購入が続くことになります。

そのため、国債市場を健全化する上でも、
早めの修正を行うというケースも考えられます。

この日銀と市場の攻防が
ドル円レートに直接起因しているわけではありませんが、
「更なる修正」を期待する市場の動きが、
円買いドル売りを招き、今の円高に進んだという形になります。

 

 

また、今回の件も含め、
日本とアメリカの政策にも昨年から変化が訪れています。

【昨年の構図】
・アメリカ政策金利の大幅利上げ
・日本は金融政策の維持を続行
→日米金利差の拡大
→日本は利上げできないと踏み込んだ海外勢の売り圧増加

【今年の構図】
・アメリカの政策金利の利上げペースの鈍化、停止が視野に
・頑なに動かなかった日本の金融政策の修正
→日米金利差の拡大も緩やかに
→更なる修正を期待する市場の思惑を踏み込んだ動きの増加

アメリカは利上げから今後、
金利の維持〜緩和の方向に。

日本は昨年の維持から、
今年は政策修正・変更が起きると予測。

これまで動き続けたアメリカと
動かなかった日本の構図が逆転してきております。

日本が今後どのように政策を変えていくのか、
もしくは見直しだけで維持するのか。

金融市場からの注目も強く、
今後の政策次第で今の円の価値も変わると思われますので、
こちらも今後解説を続けていきたいと思います。

それではまた!

PPS.Llc代表 吉岩勇紀

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この記事は2023年1月16日配信のメールマガジンとなります。
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