9月2日には一時160円台だったドル円が、
11日の東京市場午後3時には
154円付近まで円高に動きました。
背景の一つとして注目されているのが、
それまで円を売っていた投資家の買い戻しです。
なぜ、取引を閉じる動きが、
円高を加速させるのでしょうか。
今回は「円売り取引の巻き戻し」の
仕組みを整理します。
▼ 円を売る前提が変わった
今回円高に動いたきっかけの一つが、
日銀の利上げペースを巡る発言です。
9月2日、高田日銀審議委員は、
従来の利上げ幅や間隔にとらわれず、
経済や物価の変化に応じて
対応する必要性を示しました。
日銀全体で決めた方針ではありませんが、
発言後の為替市場では円高が進みました。
円で資金を借り、
金利の高い通貨で運用する取引では、
日本の金利が低いことが収益を支えます。
海外の金利が変わらなければ、
日本の利上げは借入コストを増やし、
金利差による収益を小さくします。
実際の利上げ前でも、
想定より速いペースで進む可能性を
意識した投資家が取引を見直せば、
円買いにつながるのです。
▼ 円高が、さらに円買いを呼ぶ
円を借りて外貨に換え、
金利の高い通貨や資産で運用する取引を
「円キャリー取引」と呼びます。
この取引では、
為替の動きも損益を左右します。
円高になると、
外貨を円に戻したときの
金額が減るためです。
例えば、160万円を借り、
1ドル160円で1万ドルに換えたとします。
その後、1ドル154円で円に戻すと、
受け取れるのは154万円です。
利息や手数料を除けば、
返済に6万円足りません。
金利差による収益があっても、
為替の損失で打ち消される可能性があります。
損失の拡大を避けたい投資家は、
外貨を売って円を買い戻し、
取引を閉じようとします。
こうした円買いが重なった結果、
円高が進み、別の投資家も
買い戻しを迫られることがあります。
この連鎖が、値動きを加速させる仕組みです。
▼ 円高の速さと、続く条件は別
取引の解消による円買いは、
買い戻しが一巡すれば弱まります。
短期間で大きく動いたことだけでは、
その先も円高が続くとは判断できません。
その後の方向を考えるには、
日銀が実際に利上げを進めるペースと、
米国の金利見通しを確かめる必要があります。
今回の円高を、
すべて取引の巻き戻しで
説明することはできません。
ただ、政策への期待の変化と、
既存の取引を閉じる動きを分けて見ることで、
円高の勢いと持続性を整理しやすくなります。
PPS代表 吉岩 勇紀
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