米国で8月27日から、
ジャクソンホール会議が始まっています。
市場で特に注目されるのは、
FRBが利上げや利下げについて何を語るのかです。
ところが、
今年の公式テーマを見ると、
少し様子が違います。
「金融イノベーション:決済と政策への影響」
つまり今年は金利だけではなく、
「お金をどう動かすのか」も
大きなテーマになっています。
▼ 今年のテーマに入った「決済」
中央銀行というと、
政策金利を決める組織という
印象が強いかもしれません。
しかし、金利の調整だけでなく、
お金が安全に決済され、
金融システムへの信頼を
支える役割も持っています。
そして現在、
その決済の仕組み自体が
大きく変わろうとしています。
背景にあるのが、
ブロックチェーンなどを利用した
金融のデジタル化です。
▼ 銀行預金も「トークン」になる
その動きは、
すでに銀行の世界でも
始まっています。
8月19日、
英スタンダードチャータード銀行とHSBCは、
Swiftのブロックチェーン型台帳を使った
銀行間のトークン化預金取引を初めて実施しました。
ここで使われた「トークン化預金」とは、
銀行預金をプログラム可能なデジタル台帳上で
扱えるようにしたものです。
この名前だけを見ると、
暗号資産のようなイメージが浮かびますが、
ビットコインなどとは性質が異なります。
新しい通貨を作るのではなく、
銀行に預けられたお金を、
デジタル台帳上で扱える形にしたものです。
つまり、お金そのものが別物になるのではなく、
預金を動かす仕組みが変わるイメージです。
▼ 預金をトークン化すると、何が変わるのか
現在の国際送金では、
送金から着金までに時間がかかることがあります。
その背景には、
複数の銀行を経由することや、
国や銀行によって、
営業時間が異なることがあります。
さらに、取引の照合や確認など、
裏側でも複数の処理が必要です。
預金をトークン化し、
共通のデジタル基盤上で扱えるようになれば、
24時間の決済や、より効率的な銀行間取引に
つながる可能性があります。
実際、Swiftでは現在、
世界の17行がトークン化預金を利用した
国際決済の実用化に向けて、取り組みを進めています。
▼ 変わるのは、暗号資産だけではない
金融のデジタル化というと、
ビットコインなどの暗号資産を
思い浮かべる人も多いと思います。
ただ、現在起きている変化は
それだけではありません。
既存の銀行も「預金」という
現在の金融システムの中心にあるお金を、
新しい仕組みで動かそうとしています。
国際決済銀行(BIS)でも、
8つの中央銀行と40を超える金融機関が参加し、
トークン化された銀行預金などを使って、
国際決済を効率化する
「Project Agorá」を進めています。
金融のデジタル化は、
新しい通貨を作るだけではなく、
今ある銀行や預金の仕組みを
どう進化させるかという段階にも入っているのです。
▼ 今年のジャクソンホールが映すもの
ジャクソンホールでは毎年、
FRBが金融政策について
何を語るのかが注目されます。
もちろん、今年も金利の行方は重要です。
ただ、今年の公式テーマに
「決済」が入ったことは、
金融業界で起きている変化を
象徴しているともいえます。
お金の価値に影響する「金利」だけでなく、
そのお金を、どのような仕組みで動かすのか。
世界の金融機関や中央銀行が、
その次の形を模索し始めています。
今年のジャクソンホールは、
金融政策だけでは見えない
金融の変化にも注目したいところです。
PPS代表 吉岩 勇紀
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