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11兆円の為替介入は無駄だったのか|PPSメールマガジン vol.379 2026.06.12 #メールマガジン

財務省は5月29日、
4月から5月にかけて実施した
為替介入の総額を発表しました。

その金額は、
11兆7,349億円。

円安局面での介入としては、
過去最大規模とされています。

一方で、介入後のドル円相場は、
再び159円台まで円安が進んでいます。

そのため、
「11兆円以上も使ったのに、
結局また円安に戻っている」

「国のお金が無駄に消えたのではないか」

「税金が使われたのではないか」

このように感じた方も
いるかもしれません。

しかし、ここには
大きな誤解があります。

今回は、為替介入とは何か。

そして、なぜ「無駄遣い」と見るのは
正確ではないのかを整理します。

▼ 為替介入で何をしたのか

今回行われたのは、
ドル売り・円買い介入です。

簡単に言えば、
政府が保有しているドルを売り、
その代わりに円を買う取引です。

つまり、国レベルで行う
大規模な「両替」のようなものです。

円安が急激に進むと、
市場では円を売ってドルを買う動きが
一方向に傾きやすくなります。

特に、投資筋と呼ばれる
短期で利益を狙う層が
「円安はまだ続く」と見て円売りを強めると、
相場の動きはさらに加速します。

そこで政府は、
市場にドルを供給し、
円を買い戻すことで、
過度な円安の流れにブレーキをかけます。

これが、円買い介入の基本的な仕組みです。

▼ 11兆円は「税金」ではない

今回の介入額は、
11兆円を超える非常に大きな金額です。

この数字だけを見ると、
「それだけの額が使われたのか」
と感じるかもしれません。

しかし、為替介入の原資は、
国民から集めた税金を
そのまま使うものではありません。

使われたのは、
政府が保有している外貨準備です。

外貨準備とは、
政府や日銀が保有する
ドル建て資産などのことです。

その中心には、
米国債などの外貨建て資産があります。

今回の介入では、
その外貨準備の中にあるドル資産を売り、
円を買いました。

つまり、国民から集めた税金を
そのまま市場に投じたわけではありません。

そのため、「税金が11兆円消えた」
という理解は正確ではありません。

▼ 国の資産が消えたわけではない

もう一つ重要なのは、
介入によって国の資産が
単純に消えたわけではないという点です。

ドルを売った代わりに、
円を受け取っています。

資産の形が、
ドル建て資産から円建て資金へ
変わったということです。

もちろん、外貨準備が減るため、
無制限に介入はできません。

米国債などの外貨資産を
どの程度売却するのかには、
市場への影響や国際的な関係も関わります。

しかし、
「11兆円を市場に捨てた」
という話でもないのです。

むしろ、
円高時に積み上げてきたドル資産を、
円安が進んだ局面で売却した形です。

そのため、取得時よりも
円安が進んだ水準で売却していれば、
為替差益が発生する構造になります。

つまり、
国の資産が失われたというより、
外貨資産の一部を円に戻した取引と
見るべきです。

▼ それでも円安に戻ったから無駄だったのか

では、介入後に再び円安へ戻った以上、
介入は無駄だったのでしょうか。

これも、少し見方を変える必要があります。

為替介入の目的は、
円安を完全に止めることではありません。

また、ドル円相場の流れそのものを
円高方向へ変えることでもありません。

本来の目的は、
行きすぎた変動に歯止めをかけることです。

短期間で円安が進みすぎると、
輸入価格、エネルギー価格、企業コスト、
家計の負担に大きな影響が出ます。

また、投機的な円売りが加速すると、
相場が実体経済以上に
一方向へ走ることがあります。

その流れに対して、
「これ以上の急激な円安には対応する」
というメッセージを市場に示す。

これが、為替介入の大きな意味です。

▼ 本当に考えるべきこと

今回の為替介入を見て、
「国が無駄遣いをした」
と考えるのは少し違います。

むしろ考えるべきなのは、
介入しなければならないほど、
円安圧力が強まっている事実です。

そして、介入だけでは
為替の流れを根本的に変えられないという点です。

円安の背景には、
日米金利差、エネルギー輸入、
中東情勢、財政への信認など、
より大きな構造があります。

為替介入は、
その場の急激な動きを抑える手段です。

しかし、円の価値を中長期的に支えるには、
経済や金融政策、財政運営への信頼が必要です。

よって、為替介入は、
円安を完全に止める万能薬ではありません。

あくまで、急激な円安に対して
一時的にブレーキをかける政策です。

今回の11兆円超の介入も、
政府が保有する外貨資産を使って、
過度な円安の流れを抑えようとしたものです。

為替介入のニュースは、
「国がいくら使ったか」ではなく、
「なぜそこまで円安圧力が強まっているのか」を
考えるきっかけとして見るべきではないでしょうか。

それではまた。

PPS代表 吉岩 勇紀

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この記事は2026年6月5日配信のメールマガジンとなります。
当時の状況による内容であるため、現在の状況とは異なる場合がございます。

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