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安全資産とは?|安全だと評価される理由やその特徴

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2025.03.11

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世界的な経済不安や金融ショックが起こると、「金の価格が上昇する」「日本円が買われる」といったニュースを目にする機会が増えます。これらの資産は「安全資産」と呼ばれることがありますが、なぜ経済や金融市場が不安定なときに安全資産に注目が集まるのでしょうか?また、安全資産が安全だと評価される理由が気になる方もいるかもしれません。

本記事では、安全資産の基本的な仕組みや代表的な種類に加え、それぞれのリスクや注意点、具体的な活用方法まで詳しく解説します。

安全資産とは

安全資産の概要
 

安全資産とは、元本割れのリスクが極めて少なく、価値が安定している資産を指します。代表的な安全資産には、現預金や国債などがあり、これらは発行元の信頼性が高く、将来の収益が確保されているという特徴を持っています。

金の価格は年々上昇
 

また、経済や金融市場が急変した際にも、比較的安定した価値を維持する資産は、安全資産とみなされることがあります。その代表的な例が ゴールド(金)です。金は、歴史的にインフレや金融危機の際にリスクヘッジとして機能することが多く、市場が不安定になると投資家の資金が流入しやすい特性を持っています。実際、リーマンショック後やコロナショックの際には、多くの投資家がリスク回避のために金を購入し、その価格が上昇しました。

主な特徴

価値の安定性

安全資産において、価値の安定性は極めて重要な要素です。安全資産は、市場の混乱や経済危機の際にも大幅な値下がりが起こりにくく、長期間にわたって価値を維持しやすい特性を持っています。そのため、リスクを回避したい投資家にとって「安定の象徴」として選ばれることが多く、長期保有に適しています。

流動性の高さ

流動性の高さも、安全資産を選ぶ際の大きなポイントです。多くの安全資産は、売買が容易で、必要なときにすぐ現金化できるのが魅力です。特に、外貨や国債は市場で活発に取引されており、売却の際の手間が少なく済みます。この高い流動性により、急な資金需要が生じた場合でも、迅速かつ柔軟に対応できる点が大きな強みです。

信用力の高さ

さらに、信用力の高さも安全資産の大きな特徴です。資産の発行元や管理主体の信用度が高ければ、デフォルトリスク(債務不履行)の可能性が極めて低く、資産の保全性が高いと評価されます。特に、米国債は「世界最安全の資産」とされ、金融機関や各国の中央銀行でも積極的に保有されています。この圧倒的な信用力は、資産を安全に守りたい投資家にとって非常に大きな魅力です。

代表的な安全資産

安全資産の概要

安全通貨(法定通貨)

安全通貨とは、金融市場で特に安全性が高いと評価される法定通貨を指します。米ドルやユーロは、経済基盤が安定し、取引量が多いことから「世界の基軸通貨」として広く信頼されています。また、日本円やスイスフランは、政治不安や戦争時に「有事の円買い」「有事のスイスフラン買い」として、資金の避難先として選ばれる傾向があります。

代表的な安全通貨の一例
日本円(JPY) 経常収支が黒字基調で安定し、リスクオフ時に買われやすい。
米ドル(USD) 世界の基軸通貨であり、国際決済通貨の約6割を占める。
ユーロ(EUR) 米ドルに次ぐ基軸通貨として、世界第2位の取引量を誇る。
スイスフラン(CHF) 政治・経済の安定性から、金融危機時に避難先として高い需要。

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現預金

現預金の最大の魅力は、「抜群の流動性」です。現金や預金は、必要なタイミングですぐに現金化できる高い柔軟性を持ち、資金をいつでも確保できる安心感があります。さらに、外貨を保有することは、円安などの為替リスクを分散するための有効な手段です。ただし、外貨は為替変動の影響を受けやすく、円に戻す際の元本割れリスクも伴います。そのため、定期的に為替レートを確認し、最適な両替タイミングを見極めることが重要です。

現預金の特徴
法定通貨 米ドルをはじめとする安全通貨は、高い信用性を持つ。
銀行預金 銀行預金は低リスクであり、安全な保管先に適している。
外貨の保有 円を外貨に分散することは、円安リスクの回避として役立つ。

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国債

国債は、国家が発行する債券であり、特に先進国の国債は「安全資産の代表格」として評価されています。政府の財政基盤が安定していることで、デフォルトリスクが非常に低く、資産の保全性が高いことが特徴です。また、国債は金融機関や証券会社を通じて購入できるほか、ETF(上場投資信託)を活用することで、少額から手軽に分散投資が可能です。

主な国債の例
日本国債(JGB) 円建てであるため、為替リスクがない。
米国債(UST) 世界で最も安全とされる資産のひとつ。
債券ETF 少額から複数の国や地域の国債に分散投資が可能。

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貴金属(ゴールドなど)

ゴールド(金)をはじめとする貴金属は、安全資産として独自の魅力を持っています。特に金は、インフレ耐性が非常に高く、通貨の価値が下落した場合でも価値を維持しやすい特性があります。また、金は歴史的に通貨として使われた経緯があり、長期的に価値が上昇している背景から「安全資産」としての地位を確立しています。

ゴールドが安全資産と評価される理由
インフレ耐性 通貨の価値が下がっても金の価値は維持されやすい。
リスクヘッジ 金融市場の混乱時に価格が上昇しやすい。
金の歴史背景 価値がゼロになるリスクが極めて低い。

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安全資産にもリスクはある?

安全資産にもリスクは存在
 

安全資産の最大の魅力は、市場や経済のショックに強い点です。しかし、リターンの低さや現金はインフレに弱いといった課題も存在します。そのため、「安全資産だけで資産を増やす」ことは難しいと言えます。また、安全資産にも特有のリスクがあり、インフレ耐性、流動性、為替リスクといった要素を考慮した運用が必要です。「安全資産だから価値は下がらない」と考えず、各資産のリスクを見極めた運用をすることが求められます。

安全資産の活用方法

資産運用において、資産全体が株式などのリスク資産だけに偏ると、大きな損失を被るリスクも増加します。安全資産は投資のリスクを緩和するクッションとして機能し、投資全体のリスクを抑える役割を果たします。増やすリスク資産と守る安全資産をバランスよく組み合わせることで、資産構成(ポートフォリオ)の安定性を高めることが可能です。

これから投資を始める人

まずは、現預金から少しずつ他の安全資産へ分散するのがおすすめです。現預金を一定額確保しつつ、一部を外貨預金や国債に振り分けることで、リターンを確保しながらリスクヘッジを強化できます。余裕が出てきたら、株式などリスク資産の運用も始めると、より効果的な資産分散を実現できます。

運用例

余剰資金100万円のうち、50万円を預金で保管し、30万円を国債、20万円を外貨預金に配分するなど、インフレ対策やバランスを意識した資産構成へ移行。

資産運用を行っている人

すでに資産運用を実践している人は、運用資産全体のリスク資産と安全資産のバランスを定期的に見直しましょう。自身のリスク許容度に応じた調整に加え、景気後退時には安全資産の比率を高め、市場回復期にはリスク資産を増やすなど、経済の変化に応じた資産配分の調整も有効です。ただし、長期運用を目的とした商品では、短期的な市場変動に左右されず、資産を維持したほうが良いケースもあるため、慎重に判断しましょう。

運用例

リスク資産70% / 安全資産30%の配分を、不況時には50% / 50%に変更するなど、経済状況に合わせた調整を実施。

その他金融資産の安全性は?

これまで紹介した安全資産(現預金、国債、ゴールドなど)のほかにも、株式や不動産、保険商品といった代表的な金融資産があります。これらの資産は「リスク資産」と呼ばれており、リスクを伴う運用が必要ですが、一部、安全資産と評価される資産があります。以下では、それぞれの特性や注意点について詳しく解説します。

不動産

不動産は、実物資産であることから、安全資産として位置づけられることがあります。特に、都市部の優良不動産は、価値の下落リスクが低く、長期的に安定した収益を見込める点が魅力です。また、不動産投資の強みは、賃貸収入による安定したキャッシュフローのほか、インフレ時にも資産価値や収入が物価上昇とともに増加しやすい特性にあります。

しかしながら、不動産の資産価値は、経済情勢や地域の開発計画など、さまざまな要因によって変動するリスクがあります。また、不動産は流動性が低く、売却に時間を要するため、市場低迷期には期待よりも低い価格で売却を余儀なくされることも考えられます。

株式

株式は一般的にリスク資産として分類されますが、生活必需品、医薬品、公共事業関連などの「ディフェンシブ株」は、安全資産として評価される場合があります。これらの銘柄は、景気変動の影響を受けにくく、経済状況に関係なく一定の需要が見込まれるため、投資家にとってリスクを抑えた選択肢となります。

さらに、業績が安定した企業の高配当株は、株価の値上がり益や定期的な配当収入を得られるため、安全性の高い資産と見なされています。ただし、株式は市場全体の変動や企業の業績で価値が変動するリスクが伴うため、投資の際には、適切なリサーチと計画が不可欠です。

保険商品

保険商品は「万が一」に備えることが主な目的ですが、個人型年金や生命保険などは、長期的な資産形成にも役立ち、老後の生活費や緊急時の資金確保にも活用できます。特に、元本割れのリスクが低く、満期時に元本が保証されている商品は、安全資産としての特性があります。

ただし、保険商品には流動性が低いという欠点もあります。途中解約時のペナルティや制約により、運用資金を容易に引き出せない場合もあるため、保険商品を活用する際には、契約内容を十分に理解し、契約前に内容をしっかり確認しましょう。

まとめ

安全資産を持つことは、市場の変動や経済危機から資産を守るための重要な手段です。その特徴を理解し、適切に活用することで、資産の安定性の確保を実現できます。ただし、安全資産だけで資産を増やすことには限界があります。そのため、株式などのリスク資産と適切にバランスを取りながら、効率的な資産構築を進めることが不可欠です。自分の目標やライフプランに応じて、最適な資産の組み合わせを考え、長期的な資産形成を着実に進めていきましょう。