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仮想通貨は資産形成の手段になるのか? | リスクと可能性を徹底解説

PPS.Llc

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2025.01.23

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仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)は近年、投資対象としての関心が高まっており、2024年にはビットコイン(BTC)が一時1,500万円台に到達するなど、大きな注目を集めました。主に機関投資家の参入や、世界的な金融政策の影響を受けながら、その価格は急激な変動を繰り返しています。

しかし、仮想通貨は短期間で大きな利益を得られる可能性がある一方で、極めて高いボラティリティ(価格変動の激しさ)の特徴も持っています。資産形成を考える上で、「仮想通貨を取り入れるべきなのか?」「リスクはどの程度あるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。

本記事では、仮想通貨が資産形成に適しているのかを検討し、そのメリット・デメリット、投資方法、リスク管理のポイントを詳しく解説します。

仮想通貨とは

代表的な仮想通貨、ビットコイン、イーサリアム、リップル

仮想通貨とは、紙幣や硬貨のような物理的な形を持たないデジタル形式の通貨であり、専用のウォレットアプリを通じてパソコンやスマートフォンから取引できます。仮想通貨の仕組みとして、ブロックチェーン技術を基盤に暗号技術を用いた安全な取引を実現し、取引データの改ざんを防ぐことが可能です。そのため、仮想通貨は「未来の通貨」とも言われ、新たな金融システムとなる可能性を秘めています。

また、仮想通貨にはドルや円などの法定通貨のような中央銀行による管理機関がなく、分散型ネットワークを基盤に、第三者機関が介在せずとも高いセキュリティと透明性を確保する仕組みを持っています。

代表的な通貨

ビットコイン(BTC):価値保存手段として利用される世界初の仮想通貨。

イーサリアム(ETH):スマートコントラクトを備えたブロックチェーン。

リップル(XRP):高速かつ低コストな国際送金を実現する通貨。

暗号通貨や暗号資産との違い

仮想通貨、暗号資産、暗号通貨の概要

日本ではこれまで「仮想通貨」の呼び方が一般的でしたが、国際的な金融規制や法的整備の進展からその名称が変化してきました。具体的には、2018年に日本の金融庁が、国際基準との整合性を図り、法定通貨との混同を避けるため、「暗号資産」という表記を採用しました。その後、2020年に改正資金決済法が施行され、法律上の正式な名称となっています。

現在は「暗号資産」が日本国内での公式な名称となっていますが、「仮想通貨」や「暗号通貨」の名称も依然として場面で使われており、これらの名称は、ほぼ共通の意味として扱われています。

仮想通貨が投資対象として注目される理由

その①:デジタル資産としての特性

仮想通貨は、従来の金融システムとは異なり、銀行や金融機関を介さずに国境を超えた送金が可能です。この仕組みは、「金融包摂(Banking the Unbanked)」と呼ばれ、銀行口座を持たない人々に金融サービスを提供する取り組みを指します。仮想通貨は、インターネットが利用可能であれば誰でもアクセスできるため、金融サービスの普及を促進し、銀行口座を持たない地域でも送金手段となる可能性を秘めています。

その②:高い成長性とボラティリティ

仮想通貨市場は比較的新しい市場であり、その価格変動の大きさも特徴です。ビットコイン(BTC)の場合、2017年には機関投資家の参入や法整備の進展を背景に2万円台から200万円台へと急騰しましたが、2018年にはSNS広告の掲載禁止発表などを受けて一時30万円台まで急落しました。その後も急騰と急落を繰り返しながら価格を伸ばし続け、2024年時点では一時1,500万円台に到達しました。このような極端な価格変動は、ハイリスク・ハイリターンを狙える可能性があり、投資家にとっても魅力的な選択となっています。

その③:伝統的な金融資産と異なる特性

仮想通貨は、株式や債券、不動産などの伝統的な金融資産とは異なる相関性を示すこともあります。特に株式市場が下落した際は、一部の投資家がリスク分散の一環として仮想通貨に資産を動かす影響から価格が上昇するケースが見られます。また、仮想通貨は24時間365日取引が可能であり、世界中の投資家がリアルタイムで売買できる特徴があります。これらにより、仮想通貨の資産クラスとしての重要性は年々高まっています。

その④:技術普及への躍進

近年、仮想通貨の技術的進化と実用性の向上が進み、政府や企業もその活用を本格的に検討しています。例えば、中国では中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元(e-CNY)の試験運用が進められており、仮想通貨技術の金融システムへの応用が注目されています。また、2021年にエルサルバドルはビットコインを法定通貨として採用し、国家レベルで仮想通貨を経済に組み込む先駆的な試みが行われています。このような動向は、仮想通貨の将来性を示すものであり、投資対象としての魅力を一層高めています。

仮想通貨のメリット

仮想通貨を資産形成に取り入れるメリットとして、資産分散の効果と高い成長性が挙げられます。

まず、資産分散の効果ですが、仮想通貨は株式や不動産と異なる値動きをするため、保有資産に加えることでリスク分散が期待できます。例えば、株式市場が下落しているタイミングに仮想通貨が値上がりすることで、損失をある程度相殺できる可能性があります。異なる値動きを持つ資産を組み合わせることで、一方の下落をカバーし、全体的な資産の安定性を高める資産構築が狙えます。

さらに、将来的な成長性の観点からも仮想通貨は魅力的です。仮想通貨市場は短期間で価格が大きく変動するという特徴がありますが、ビットコインやイーサリアムなどの主要通貨は、過去10年間で長期的な価格上昇を見せています。この傾向は、市場の成長や技術の進化がもたらす将来性への期待を反映しており、投資対象としてのポテンシャルを示しています。

このように、仮想通貨を資産形成に取り入れることは、リスク分散と高い成長性という2つの重要なメリットをもたらします。

仮想通貨のリスクとデメリット

メリット デメリット
成長性の高い金融資産 価格の変動が激しい
分散投資の選択肢 規制の不確実性がある
ステーキング・DeFiなどの運用も可能 日本での税制(最大55%の累進課税)
売買取引が24時間可能 セキュリティリスク(ハッキング・紛失)

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デメリット①:価格乱高下による不安とストレス

仮想通貨市場は非常にボラティリティ(価格変動)が高く、短期間で価格が大きく変動する特徴があります。この乱高下で投資家は心理的なストレスを抱えることが多く、短期的な価格変動に振り回され、冷静な投資判断が難しくなる場合があります。

リスク例

ビットコインの価格が数日で大きく下落し、不安や焦りから全て売却した結果、損失を確定させてしまった。

デメリット②:法整備が十分に進んでいない

仮想通貨はまだ歴史が浅く、多くの国で法整備が進行中です。国ごとに規制方針が異なるため、グローバルな市場全体に影響を与える可能性があります。特定の国の政府が仮想通貨に対する方針を変更することで、価格が大きく上下するリスクがあります。

リスク例

ある国で仮想通貨の税制を強化する規制が発表され、その影響で市場全体が大きく下落した。

デメリット③:日本における税制の高さ

日本では、仮想通貨の利益は雑所得として扱われ、15%〜55%の累進課税が適用される可能性があります。また、売却時だけでなく、他の通貨への交換や決済に利用した場合にも課税対象となります。そのため、課税されるタイミングを正確に把握し、計画的な運用が求められます。

リスク例

4,000万円の利益を確定した場合、所得税45%と地方税10%が発生し、合計で約2,280万円の税金を支払う必要がある。

デメリット④:セキュリティリスク

仮想通貨には資産を失う可能性があるセキュリティリスクが存在します。特に取引所のハッキングやウォレットの管理ミスが主なリスクとなります。これらのリスクを緩和するためには、安全性の高いウォレットを選択し、復旧キーを確実に保管することが重要です。

リスク例(取引所)

過去にMt.GoxやCoincheckなどの取引所がハッキングされ、数百億円規模の資産が流出。取引所により対応が異なり、補填されないケースもあります。

リスク例(ウォレット)

個人で仮想通貨をウォレット管理していたが、パスワードや復旧キーを紛失してしまい、二度と取り出せなくなった。

株式投資と仮想通貨の違い

株式 仮想通貨
市場の歴史 長い歴史があり、投資手法や規制が確立 数十年の新興市場で、制度が発展途上
投資基準 将来的な成長や安定性を評価して投資 将来的な普及や市場の成長を見越して投資
価格変動 比較的安定しており、暴落リスクは限定的 瞬間的な変動も多く、乱高下が激しい

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仮想通貨と株式にはいくつかの重要な違いがあります。投資を検討する際には、それぞれの特性を理解しておくことが大切です。

その①:市場の歴史と成熟度

株式市場の歴史は長く、法整備や市場の安定性も確立されています。法規制が整備され、個人から機関投資家まで幅広い層が取引に参加しているため、価格が比較的安定している傾向があります。一方で、仮想通貨市場は誕生から十数年という新しい市場であり、まだ精度が完全に整っていないことから、価格の乱高下が起こりやすい特徴があります。今後、参加者の増加や法整備が進むことで、市場が成熟し安定性が向上する可能性も期待されています。

株式市場:数百年の歴史があり、法整備や規制が確立され、安定性が高い。

仮想通貨市場:歴史が浅く規制の影響を受けやすいが、成長の可能性がある。

その②:税制の違い

株式と仮想通貨では、適用される税制が大きく異なります。株式は分離課税が適用され、売却益には一定の税率(20%)が課税されます。一方、仮想通貨の売却益は雑所得として扱われ、累進課税が適用されるため、最大で55%の税率が課される可能性があります。この税負担の差は、仮想通貨投資が他の金融資産と比較して税制面での課題と感じられる大きな要因となっています。

株式:売却益に20%の分離課税が適用され、控除や優遇措置も存在する。

仮想通貨:雑所得として扱われ、最大55%の累進課税が適用される場合がある。

その③:投資基準の違い

株式と仮想通貨では、投資する際の判断基準も大きく異なります。株式投資では、企業の業績や財務状況、成長性や安定性を基に評価しますが、仮想通貨では、デジタル資産としての普及や技術革新、さらには市場の需要など、将来性に特化した評価が中心となります。

株式:企業の業績や財務状況を基に成長性や安定性を評価して投資。

仮想通貨:技術革新や普及の可能性など、将来性に注目して投資。

短期投資と長期投資それぞれの特徴

短期投資と長期投資の流れ

仮想通貨の投資には、短期投資と長期投資の2つの手法があります。それぞれの特徴を理解し、自分の投資スタイルに合った戦略を選ぶことが重要です。

短期投資は、短期間の市場の動きを分析し、価格の上昇や下降を予測して利益を得ることを目的とした手法です。この投資スタイルは、市場の動きを常に監視する必要がありますが、価格の急激な変動を活用できれば、短期間で大きな利益を得ることも可能です。しかし、急な価格変動による損失のリスクも大きく、冷静な判断や迅速な対応が求められます。

そして、長期投資は仮想通貨の将来的な成長を見越して、数年単位で保有する手法です。仮想通貨は市場全体で過去に何度も価格の更新が続いており、将来的な価格成長を期待できます。また、長期投資は短期的な価格変動の影響を軽減できるため、短期投資に比べるとリスクは抑えられると言われています。

ただし、ハイリスク・ハイリターンの投資である点は変わらないため、資金の配分や売買タイミングには慎重な判断が必要です。

まとめ:仮想通貨は資産形成に向いているのか?

仮想通貨は、その成長性や革新性から、将来を見越した投資先として非常に魅力的です。ただし、価格の大きな変動や規制の不確実性があるため、保有割合を大きくしすぎるとリスクが高まります。そのため、リスクとリターンのバランスを十分に考慮し、適切な割合で運用することが重要です。適切な付き合い方をすることで、仮想通貨は資産形成の新たな可能性を広げる選択肢となるでしょう。