タンス預金の落とし穴とは|知られざるリスクと対策を解説
PPS.Llc
2024.07.30
タンス預金の総額は、日本全体で50兆円から100兆円に上ると推定されています。これは、多くの人々が銀行にお金を預けるメリットを感じていないことや、金融機関に対する不信感を抱いている表れかもしれません。一見すると安全に思えるタンス預金ですが、実際にはさまざまなリスクを伴います。本記事では、タンス預金のリスクやデメリットを説明し、それに対する具体的な解決策をご提案します。
タンス預金とは何か?
『タンス預金』とは、銀行に預けずに自宅で現金を保管することを指します。実際には金庫などタンス以外の場所で管理されることが多いため、金融機関に預けられていない現金全般を指す言葉として広く使われています。
日本におけるタンス預金の実態
タンス預金は日本で古くから行われている方法ですが、過去の経済動向を受けて増加傾向にありました。2024年現在では、日本の株高や新NISAの影響により、タンス預金は減少傾向にあります。しかし、過去に銀行破綻を経験した高齢者層の中には、手元に現金を保管することが安全であると信じる方も多く、日本全体の家計内には何十兆円規模の現金が眠っていると見られています。
タンス預金増加の時代別背景 | |
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1990年代:バブル崩壊 | 金融機関の経営破綻により、預金に対する不信感が増加。 |
1999年:ゼロ金利政策 | ゼロ金利政策が導入され、預金金利はほぼゼロに低下。 |
2008年:世界的金融不安 | リーマンショックの影響で、現金保有の傾向が強まる。 |
2015年:相続税課税強化 | 対象者拡大の不安から、現金を手元に置く人が増加。 |
2016年:マイナンバー導入 | 国に国民の資産が把握されることに不安を持つ声が増加。 |
2020年:コロナ禍の影響 | コロナショックによる消費力低下で、タンス預金の急増が報道。 |
タンス預金の経済影響とは
私たちが銀行に預けたお金は、そのまま保管されるだけではなく、銀行が資金を必要とする企業や個人に貸し出しています。この預金と貸付の流れは、経済にお金の循環を生み、景気の活性化に寄与しています。一方で、動かないタンス預金は経済に回らず、経済成長に何も寄与しません。そのため、政府が資産運用を奨励しているのは、眠っているタンス預金を経済に回す狙いがあると考えられています。
タンス預金が狙われる理由
タンス預金は、資金移動の記録が見えづらい管理方法のため、資金洗浄や課税逃れの手段として利用される場合があります。金融機関や税務署は、高額な入金や不自然な資金移動に対して注意を払っており、タンス預金もその対象として見られる点があります。特に、高額な現金を銀行に預ける際には、出所を明確にするための証明が求められることがあるのです。
タンス預金のメリット
タンス預金の最大のメリットは、「いつでもお金を使える」点です。ATMに行く手間や手数料を気にせずに現金を手元に置けるため、利息がほとんどつかない銀行口座に預けるよりも利便性が非常に高いです。また、日本の金融機関は高い安全性が評価されていますが、過去の破綻事例や日本経済の動向を踏まえ、資産を自分で管理する方が安心だと考える人も少なくありません。
流動性の高さ:現金をいつでも取り出し可能。
心理的安心感:目に見える形で現金を持つ安心感。
銀行破綻への対策:金融機関に依存しない資産管理。
デフレ経済に強い:低金利預金よりも利便性が高い。
タンス預金は何が悪いのか:5つのリスク
相続・贈与 | 資金移動が見えない資産のため、税金逃れの疑いをかけられやすい。 |
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税務調査 | 不自然な入金や資金移動は金融機関や税務署のチェック対象となる。 |
新紙幣発行 | 旧札化した高額現金は隠し資産(タンス預金)と把握されやすい。 |
災害・盗難 | 預金保護や保険補償が無いため、資産を失う危険性がある。 |
円安・インフレ | 現金は物価上昇により価値が目減りする。 |
タンス預金は手元で現金を管理できるため、日常や緊急時に対応しやすい利点があります。しかし、その背後には無視できないリスクが存在し、資産の消失や後々のトラブルを招く可能性もあるため、リスクを理解しておくことが重要です。
リスク①:相続・贈与
タンス預金は、資金移動の記録が不明瞭であるため、相続税の申告漏れや税金逃れの疑いがかけられやすい資産です。亡くなった家族からタンス預金をそのまま受け取った場合、後に申告漏れの疑いで税務署から調査を受けることがあります。
リスク②:税務調査
タンス預金は税務署が把握できないと言われることがありますが、それは誤りです。税務署は源泉徴収票から収入を確認し、過去の入出金記録を通じて収入に見合わない不自然な入金がある場合、税務調査の対象とすることができます。そのため、タンス預金であっても完全に把握されないわけではありません。
リスク③:新紙幣発行
新紙幣の発行により、これまで自宅で保管していた現金は全て旧札になりました。旧札でもこれまで通り使用できますが、大量の旧札を使う行為は非常に目立ちます。そのため、金融機関や税務署からは、自宅で隠していたお金(タンス預金)であると判断されやすくなります。
リスク④:災害・盗難
タンス預金には安心感があるかもしれませんが、預金保護や保険補償がないため、安全性としては低い管理方法です。特に、高齢者を狙ったタンス預金の盗難や特殊詐欺のニュースが度々報道されており、被害に遭えば資産を失うことになります。
リスク⑤:円安・インフレ
現金は物価上昇が起きるインフレに対して弱い資産です。例えば、1万円で買えた商品が値上げで1万5千円になれば、1万円札では買えなくなります。200円だった食品が300円に値上げされれば、同じ額で買える量も減ります。これが円の目減りと呼ばれる現象であり、円安とインフレの影響を受けやすいことがタンス預金のリスクです。
タンス預金でやってはいけないこと
タンス預金そのものは違法ではありません。しかし、資金移動の記録が把握しづらいことから、課税逃れや資金洗浄を目的に利用される場合があります。また、現金を一箇所で管理する方法には、資産をまとめて失うリスクも潜んでいます。正しく保管していた現金がリスクに晒されないよう、以下の点に注意しましょう。
相続を目的とした資産隠し
タンス預金を資産隠しや課税逃れを目的に行うことは絶対に避けるべきです。申告のない資産を家族に残した場合、後にその家族が相続逃れや申告漏れのペナルティを課せられる可能性があります。また、保管先を家族に告げずに亡くなった場合、その資産が誰にも知られずに消失することや、見つかった場合も相続を巡り家族間のトラブルを招く可能性があります。記録に残らないお金は、正しく管理と継承を行わなければ、後のトラブルを引き起こす資産となるのです。
→資産を正しく相続するために、申告は忘れずに行いましょう。
必要以上の現金保管
タンス預金には資産保護がないため、盗難や災害による紛失のリスクがあります。こうしたトラブルが起きた場合、資産は消失することがほとんどであり、高額であるほど将来の暮らしに大きな影響を及ぼします。現金を手元で一括管理することは非常に便利ですが、資産の置き場所を分散させ、リスクを抑える方法も必要です。また、現金はインフレに弱い資産のため、現金だけの資産構成はインフレが続くほど資産価値が目減りします。
→資産の分散や運用を検討しましょう。
旧札のままで保管
これまで保管していたタンス預金は、新紙幣発行により旧札となりました。旧札は今後も使用できますが、そのまま保管を続けることはおすすめできません。なぜなら、旧札は時間が経つほど目立ちやすくなるためです。新紙幣発行から年月が経つと、高額の支払いや口座への入金で旧札を使用した場合、それが自宅で保管されていたお金だと認識され、資産隠しの疑いを持たれる可能性があります。
→旧札は早めに使用して、新札で保管し直しましょう。
タンス預金の最適な金額は?
推奨金額
6ヶ月分の生活費 + 緊急用の備え(10万〜30万円)
例)生活費月20万円の場合:150万円(20万円×6ヶ月 + 30万円)
タンス預金を普段の生活費や緊急用の資金として持つ場合、上記を目安にした金額を保管することをおすすめします。それ以上の金額を持つこともできますが、多額の現金を一箇所で保管することには、盗難や災害による紛失、相続や税務におけるトラブルなどのリスクが伴います。緊急時の備え以外のお金は、投資や預金などに分散して保管し、リスクを減らすための運用管理を行うことがおすすめです。
また、日本の金融機関に不安を持ち、口座に移したくないと考えている方は、海外口座へ資産を移すことも検討できます。ただし、海外の銀行の選択には慎重さが求められるため、適切なサポートを受けることが重要です。
タンス預金の運用先は?
タンス預金の運用先としては、将来に備えるために現在の資金を減らさずに保全する方法と、資金を育てて増やす選択肢があります。資金を増やすための手段としては投資が挙げられますが、FXや株式取引はリスクが高く、大切な資産を減らす可能性もあります。したがって、長期的な視点で資金を保全しながら増やす運用先を選択することが重要です。ここでは、長期運用に適した選択肢をご紹介いたします。
銀行預金(普通・定期預金)
当面使う予定のない資金は、口座に預けて盗難や災害のリスクを抑えることがおすすめです。ただし、入金額が100万円以上ある場合は、現金の出所をなど確認される場合があるため、事前に準備をしておきましょう。
外貨預金(ドル・ユーロなど主要通貨)
円安やインフレに弱い現金のまま持つのではなく、為替リスクを避けるためにドルやユーロ、豪ドルなどの外貨で保管するのも一つの手です。海外通貨にも変動リスクはありますが、相対的に円が下がった場合の影響を和らげる効果があります。
保険商品(積立・学費保険)
タンス預金の目的が老後や教育資金の場合、学費や積立などの保険で運用する方法もあります。返戻率が100%の商品を選べば、元本割れを気にする必要はありません。さらに、医療保障があれば緊急時の備えとしても使えます。
投資信託(積立)
投資信託は、投資家から集めたお金を専門チームが運用し、成果を分配する仕組みの金融商品です。投資信託には低リスクの商品もあるため、動かさない現金の運用先として適しています。
リスク対策なら、海外口座を開設する方法も
タンス預金のリスク対策として、資産を海外口座に分散する方法もあります。海外の銀行に資産を預けることは、通貨の分散を目的とした外貨預金としてだけではなく、日本経済に対するリスク対策としても有効です。
海外口座がタンス預金の運用先として優れている理由
- 通貨の分散:円の価値が下がるリスク対策として、ドルなどの外貨に資産を分けられます。
- 金利の利点:日本よりも高い金利で定期預金を組むことができます。
- 経済動向への対策:日本経済の状況に左右されない資産保全が可能です。
まとめ
タンス預金は、現金を手元に置くことで得られる安心感や利便性がありますが、相続・贈与のトラブルや税務調査のリスク、災害や盗難、インフレによる価値の目減りなど、見逃せないリスクが多く存在します。資産を守り増やすためには、タンス預金の分散管理が必要です。その中でも海外口座は最適な運用先のひとつですので、ぜひ、検討してみてください。