タンス預金は何が悪い?|5つのリスクと“失敗しない”現金管理法

PPS.Llc
2024.07.30

「銀行よりも手元に現金を置いておく方が安心」─
そんな理由でタンス預金を選ぶ人が、今も少なくありません。
しかし、実際にはタンス預金には税務・防犯・経済的な複数のリスクが潜んでいます。しかも、それは思いがけないタイミングで、あなたの大切な資産を危機にさらすかもしれません。
本記事では、タンス預金の実態と5つの主要リスクを明らかにしつつ、「安心して現金を管理するにはどうすればいいのか?」を具体的に解説します。
タンス預金とは?|
なぜ今も続ける人が多いのか
「タンス預金」とは、銀行などの金融機関に預けず、自宅で現金を保管することを指します。保管場所は実際にタンスとは限らず、金庫や家具の引き出し、布団の下など様々ですが、共通しているのは、口座や通帳などの“記録に残らない現金”である点です。
では、なぜ今もタンス預金を選ぶ人がいるのでしょうか?
その理由として多いのは、「銀行を信用していない」「いつでも現金を使いたい」「手数料を払いたくない」といった心理的な安心感や利便性があるためです。特に、高齢世代では過去の銀行破綻の記憶が強く、現金は“目に見える安心資産”として扱われています。
こうした背景から、タンス預金は一時期に比べ減少しつつあるとはいえ、なお根強く残っているのが現実です。
タンス預金が増えた背景|
日本人の根強い“現金信仰”
日本では、長年にわたって「現金で持っているのが一番安心」という価値観が根付いています。この背景には、経済環境の変化や制度の導入、金融機関への不信感など、さまざまな要因があります。
特に以下のような出来事は、人々がタンス預金を選ぶ心理に大きく影響してきました。
時代別:タンス預金が増えた主な出来事
年代 | 出来事 | 内容・影響 |
---|---|---|
1990年代 | バブル崩壊 | 銀行の破綻・金融不安で預金不信が拡大 |
1999年 | ゼロ金利政策 | 銀行に預けても利息がつかない状況に |
2008年 | リーマンショック | 世界的な金融危機で現金保有志向が強まる |
2015年 | 相続税の課税強化 | 財産把握への警戒感から“現金で持つ”傾向が拡大 |
2016年 | マイナンバー制度導入 | 「国に資産を把握されるのでは」という不安が広がる |
2020年 | コロナショック | 世界的な経済不安により現金保有が急増 |
このように、タンス預金は単なる「古い習慣」ではなく、時代の不安定さや制度変更へのリアクションとして根付いてきた文化とも言えます。
「自分の資産は、自分の手元で管理したい」という思いが、タンス預金という選択につながっているのです。
実は経済に悪影響?|
タンス預金と銀行預金の違い
タンス預金は「いつでも使える安心な現金」として魅力的に感じるかもしれません。しかしその現金は、経済全体で見たときに「動かないお金」として扱われます。
銀行に預けられたお金は、住宅ローンや企業への融資、投資資金などに活用され、経済を循環させる役割を果たします。一方で、タンス預金は家庭内にとどまり、社会に流れ出ることがありません。
つまり、日本全体でタンス預金が増えすぎると、お金の流れが滞り、経済全体の活力が低下する可能性があるのです。

日本政府や金融機関が「投資」や「資産運用」を促すのは、こうした“経済の血流”を活性化させる意図があるとも言われています。
日本全体の国民が資産をただ“眠らせる”のではなく、安全に管理しつつ社会にも貢献する方法を選ぶようになることで、日本経済の成長につながるからです。
タンス預金のメリットと
安心感とは?
ここまで、タンス預金のリスクや経済への影響について解説してきましたが、そもそもなぜタンス預金を選ぶ人が多いのでしょうか?やはり、“目に見えるお金”が手元にあるという安心感は、何にも代えがたい価値を持っているためだからです。
タンス預金が持つ主なメリット
いつでもすぐ使える流動性
ATMや営業時間を気にせず、いつでも取り出し可能。
手数料やトラブルの回避
銀行手数料、システム障害、ペイオフ対象外問題などを避けられる。
資産を「見える形」で管理できる
自分で把握しやすく、預け先による不安がない。
金融機関を経由しない安心感
銀行破綻や国による資産管理への警戒から、自己管理を選ぶ人も。
特に高齢者層では、「預金よりも現金が信頼できる」と感じている人も少なくありません。また、災害時や突発的な医療費などにも即応できるため、“生活防衛資金”としての機能も果たします。
ただし、こうしたメリットを享受するためには、リスクとのバランス感覚が重要です。次のセクションでは、安心だけでは済まない“見逃しやすい5つのリスク”について詳しく見ていきましょう。
それでも危ない!
タンス預金の5つのリスク
どんなに便利で安心に見えても、タンス預金には見逃せないリスクが潜んでいます。特に現代のように経済や制度が大きく変化している時代には、“知らなかった”では済まされない問題に発展することも。
ここでは、タンス預金が抱える5つの代表的なリスクについて解説します。
タンス預金の主なリスク一覧
リスク | 内容・懸念点 |
---|---|
① 相続・贈与 | 記録が残らないため、申告漏れ・税逃れと疑われやすい。 |
② 税務調査 | 不自然な現金入金は税務署に把握され、調査対象になり得る。 |
③ 新紙幣と旧札リスク | 大量の旧札は「隠し資産」と見なされやすく、目立つ存在に。 |
④ 災害・盗難 | 補償なし。万が一の紛失で資産がゼロに。 |
⑤ インフレ・円安 | 物価上昇で「円の価値」が目減り。現金だけだと資産が目減りする。 |
リスク① 相続・贈与
タンス預金は“見えない資産”であるがゆえに、相続時に申告漏れと見なされやすいのが最大のリスクです。たとえば、親が自宅に数百万円を保管していた場合、それを子が知らずに受け継ぎ、口座に入金しただけで「贈与」や「申告漏れ」と判断される可能性があります。
- 相続税の調査では「現金の出所」が重視される
- 亡くなった本人が申告していない場合、家族に追徴課税が及ぶことも
「誰が、どのように」現金を管理しているかを明確にし、ノートやメモなどで伝えておくことが重要です。
リスク② 税務調査
「タンス預金はバレない」と思っていませんか?実は、税務署は“収入に見合わない資産”を監視しています。何年も貯めていた現金ですと説明しても、証明できる書類や帳簿がなければ通用しないのが現実です。
- 給与や事業所得に対する不自然な高額現金の入金が目立つと調査対象に
- とくに旧紙幣での大量入金や、高齢者名義の大口振込は警戒されやすい
少額ずつ入金する/定期的に記録する/用途を明記など、透明性を持った行動が必要です。
リスク③ 新紙幣と旧札リスク
2024年から新紙幣が発行され、大量の“旧札”で現金保管している人には新たなリスクが生じています。
- 旧札はこれまで使用可能だが、月日が経つにつれて目立つように
- 金融機関や税務署に「隠し資産(タンス預金)」と疑われやすい
- 特に高額入金時、「どうしてこんなに旧札を?」と出所の説明を求められる可能性あり
旧札のまま保管せず、早めに新札に両替・再整理することで疑念を回避できます。
リスク④ 災害・盗難
自宅に保管している現金は、預金保険の対象外。つまり「何があっても自己責任」です。ニュースでも「現金数百万円が盗難」といった事例を見る機会も多くなりました。
- 火災や地震で消失しても補償なし
- 空き巣や強盗に狙われやすい(とくに高齢者宅)
- 被害後に申告しても「証明できない=戻らない」
現金を分散して保管し、必要以上の金額は持たないのが基本です。
リスク⑤ インフレ・円安
現金は“価値が変わらない”と思われがちですが、それは大きな誤解です。「お金を使っていないのに、目減りしている」という状況が実際に今、日本で起凝っています。
- インフレが進めば、同じ1万円で買えるモノが減っていく
- 円安になると、海外からの物価上昇で生活費も上がる
- タンス預金は、それらの資産の実質的な価値低下から守れない
資産の一部は、インフレに強い形で保全・運用することを考えましょう。
やってはいけない
3つのタンス預金の使い方
タンス預金を行うこと自体は違法ではありません。実際に緊急用の資金などは自宅で保管する方が便利です。しかし、その使い方を誤ると大きなトラブルを招く可能性があります。
ここでは、特に避けるべき3つのタンス預金の使い方を紹介します。
その①:相続目的の資産隠し
タンス預金は“記録が残らない資産”として、相続税逃れを狙った資産隠しに使われることがありますが、これは大きなリスクです。
- 申告しなかった現金が後に発見されると、家族にペナルティが発生する
- 遺族が存在を知らず、そのまま失われる(=埋蔵金化)ことも
- 相続争いや税務調査のきっかけになるケースも多い
遺す資産は、記録に残る形で管理し、きちんと申告しておくこと。
その②:高額現金の一括保管
一ヶ所に多額の現金を保管するのは、災害・盗難の両面でリスクが高い管理方法です。
- 地震や火災で焼失すると補償はゼロ
- 空き巣に“狙われる家”として危険度が上がる
- 持ち出し時に紛失・盗難のリスクも倍増
必要最低限以外の現金は金融機関や他の方法へ分散。「見えるところに現金を置かない」ことが、防犯対策の第一歩です。
その③:旧札のまま持ち続ける
新紙幣の発行後も旧札の使用は可能ですが、“見えないリスク”が生まれます。
- 旧札のままだと「隠していた資産では?」と疑われやすい
- 銀行への高額入金時に、資産の出所を求められる
- 年月が経つにつれて旧札は目立ちやすくなる
旧札は早めに使い切る or 新札に交換して管理しましょう。
じゃあどうする?
現金の管理方法
タンス預金には確かに“手元で見える安心”がありますが、「全額現金」は危険です。万が一のリスクに備えるには、他の分散手段を知っておくことが不可欠です。
次は、資産を安全に守りつつ、将来の価値減少も防ぐ現実的な「代替管理」の選択肢をご紹介します。
安全に預ける方法と
資産分散の考え方
① 銀行預金(普通・定期預金)
- 金融機関の預金保険制度によって、1,000万円+利息まで保護
- 被災時でも引き出せる体制も整っている
- 高額入金は資金の出所確認が必要な場合あり
元本を減らすデメリットがないため、当面使わない余剰の現金は、口座で保管して分散しておくと良いでしょう。
② 外貨預金(ドル・ユーロなど)
- 円安リスクへの通貨分散
- 為替差益が出れば資産が増える可能性も
- 為替変動リスク・手数料には注意
資産を一部をドルなどの外貨に分散することで、インフレや円安での目減りを防ぐ対策方法になります。
③ 保険商品(積立・学費・終身保険)
- 元本保証の商品もあり、長期の備えに最適
- 医療保障などが付けば、“いざ”という時にも対応可能
- 途中解約は元本割れのリスクあり
加入時の保険料や、商品の特性などを理解して選ぶことが重要です。
④ 投資信託(積立)
- リスクを抑えた長期分散投資が可能
- 様々な分野の商品を選択できる
- 市場変動で元本割れのリスクも
長期視野で資産を少しでも増やす・目減りを抑えたい場合は、低リスクの投資商品も選択手段となります。

海外銀行という選択肢|
通貨分散と国リスク対策
タンス預金や日本の銀行口座だけに頼るのは、いわば「日本という一国に人生を預ける」状態。
しかし、世界には日本よりも高金利・安全性・多様な通貨環境を持つ国々があります。これらの海外銀行口座を活用すれば、日本の預金では得られない様々な分散効果が得ることができます。

通貨の分散
- 円だけでなく、米ドルやユーロなど複数通貨に資産を分けられる。
- 為替やインフレによる価値減少リスクを和らげられる。
金利のメリット
- 国によっては年利3〜5%の定期預金も可能。
- 日本の超低金利預金では得られない運用利回りが狙える。
日本の経済リスクからの分散
- 日本の財政不安、円安、災害リスクなど“国リスク”に対する備えになる。
- 資産を国外に逃がすことで、日本の非常時の保全性が高まる。
まとめ|
安心できる現金管理のために
タンス預金は、手元に現金がある安心感や使い勝手の良さといったメリットがありますが、同時に大きなリスクも抱えています。しかし、こうした問題は「知っていれば避けられる」ものばかりです。
- 相続や贈与のトラブル
- 税務調査の対象
- 災害や盗難による損失
- 新紙幣対応による資産発覚のリスク
- 円安・インフレでの価値目減り
“手元の安心感”と“資産の安全性”はまったくの別もの。
リスクと安心のバランス感覚が、これからの資産管理には欠かせないのです。
手元に置く現金は、必要最低限に(盗難・災害・旧札化対策)
使う目処のない現金は銀行預金や投資で運用(リスク分散・インフレ対策)
海外銀行・外貨預金を
「次の一手」にしたい方へ
「海外口座ってどうやって開設するの?」
「外貨を持つと、どんなメリットがある?」
「外貨預金は“ドル一択”で本当にいいの?」
これらの疑問をお持ちの方は、まずは 「外貨保有の基本」をまとめた無料ガイドをご覧ください。タンス預金からの“次の一手”として、外貨資産の活用法をやさしく解説しています。
よくある質問(FAQ)
ここでは、タンスに関する疑問をピックアップし、実践的な視点でお答えしていきます。
Q.タンス預金に違法性はありますか?
タンス預金自体に違法性はありません。
現金を自宅で保管することは法律違反ではなく、自由な資産の管理方法のひとつです。ただし、相続・贈与時に申告を怠ると「脱税」や「申告漏れ」と見なされる可能性があります。
Q.タンス預金を続けるリスクは何ですか?
タンス預金には5つの実質的リスクが潜んでいます。
災害や盗難による現金消失、税務署からの調査、新紙幣への切り替え時の資産露呈、そして、インフレや円安による価値減少など、安全性と経済的な合理性の両面でリスク管理が必要です。
Q.タンス預金は税務署にバレますか?
通常の生活では把握されませんが、相続や銀行口座への高額入金などを通じて、税務署が把握する可能性は十分あります。
収入やこれまでの入出金の実績などから、不自然な現金の動きがあれば、調査対象として浮上するケースがあります。